ウイルスについて知ろう

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異 強毒化?弱毒化?

日本で広がっているウイルスのタイプについて

 

2020年8月5日に、国立感染症研究所から、日本で感染が広がっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のタイプについて、発表がありました。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/467-genome/9787-genome-2020-2.html

この結果、

  • 2月ごろまでは、中国の武漢で見つかったウイルスに近いタイプが広がった
  • 3月中旬ごろから、欧州で広まったタイプをベースとして、様々な変異が起こったタイプが各地で散発的に発生。
  • 6月ごろから増えてきたタイプは、欧州系統から変化したタイプの内の一つが、全国的に拡大。
  • 6月ごろから増えてきたタイプは、欧州系等と比べて6か所変化しているが、途中段階は見つかっていない。

6月以降の広がりは、若い人を中心に広がり、徐々に高齢者への感染も増えていました。初期の広がりとは、少し感じが違うので、その原因の一つとして、ウイルスの変異があるのかもしれません。調べた数が十分ではないので、はっきりとはわかりませんが、途中段階が見つかっていないことから、無症状者に広がっていた可能性が指摘されています。調査されなかった人の中で広がっていただけかもしれませんし、海外で変異したものが広がっただけかもしれません。

 

 

 

2. ウイルスの変異と、毒性、感染力の関係

無症状者で広がっていたとすると、病原性が非常に弱くなったけど、感染力は高いという可能性もありますが、国立感染症研究所の報告だけでは何とも言えません。多くの人は、変異と感染力、毒性の強さについて、知りたいと思うと思いますが、そんな簡単ではありません。実際には、このような事を調べた論文はほとんどないので、想像でしか答えられません。

 

この問題について、AASJの西川伸一先生が論文を紹介していました。結局、わからないという結論になるのですが、今の科学技術でわかるのは、これぐらいだという事を知ってもらうことが、正しく理解する第一歩だと思って紹介します。

https://aasj.jp/news/watch/13703

 

元の論文(ワシントン大学 アメリカ)

Deep mutational scanning of SARS-CoV-2 receptor binding domain reveals constraints on folding and ACE2 binding

 

方法

  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の、Sタンパク質の中の、ACE2結合ドメイン(感染するときに最初に結合する部分)に変異を導入(新型コロナウイルスのゲノム全体の約2%)
  • 201個のアミノ酸に相当する部分を、一つずつ、元のアミノ酸以外の19種類のアミノ酸に変えたものを作成(理論的には 201か所×19種類=3819種類だが、このうちの3804種類作った。)
  • 作った変異タンパク質を酵母に作らせた。酵母の表面に出てくるように細工して、人に感染するときに結合するACE2タンパク質との結合力を調べた

結果

  • 半分ぐらいの変異は、大きな変化がない
  • 変化があったものは、ほとんどがタンパク質が作られなくなったか、ACE2タンパク質との結合力が低下した
  • ACE2タンパク質との結合力が上がったものもあるが、結合力の上がるような変異が、実際の患者から見つかりやすいわけではない。

 

解説

タンパク質は、20種類のアミノ酸が、決まった順序に並んでできています。この論文でターゲットにしているSタンパク質は、コロナウイルスの表面の棘のようになっている部分です。この部分が、人の細胞の表面にあるACE2というタンパク質と結合して、感染が始まります。表面に結合するだけでは感染にはならず、ウイルスが人の細胞に取り込まれる−コピーを大量に作る−細胞を突き破って外に出る−次の細胞に結合する という繰り返しで、体内で増殖します。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノムは、約10000個のアミノ酸の並びを示している設計図です。この設計図には、人の細胞に結合するもの、ウイルスの殻の部分、人の細胞内で増殖するために必要な部分など、色んな機能を持ったタンパク質が含まれています。このように、いろいろなタンパク質がある中で、重要そうに見えるSタンパク質(1273個のアミノ酸でできている)の中で、

人の細胞に結合する部分周辺の201個分だけを選んで、実験しています。これは、ウイルスのゲノムのたったの2%に書かれている部分ですが、全パターン作ってると3800種類ものパターンができてしまいます(20種類の内の1つは元のウイルスと同じなので、残りの19種類×201個のアミノ酸)。今は、簡単に変異体を作ることができますが、それでもこれだけの数を作るのはかなり大変な事です。

 

結果としては、生物学を知っている人なら当たり前と感じる結果です。1か所ぐらい変異が入っても、たいていの場合何も起こりません。そして、何か変化が起こる場合は、機能が低下するケースがほとんどです。自然界では多くの変異体は、変異前と同じか、機能が低下してしまって生き残れなくて消えていきます。ほんの一部の幸運な変異を獲得したものが、生き残っていきます。

さらに言えば、この実験で見ているACE2結合力も、結合量が強くなることが、必ずしも生存に有利とは限りません。ある程度の結合力があれば十分です。

例えば、ウイルスが、

 ヾ鏡できる細胞の近くに到達する

◆ヾ鏡する細胞に結合する

 感染する細胞に取り込まれる

ぁヾ鏡した細胞内で増殖する

ァ〜殖したウイルスが排出される

という段階があったとします。,任蓮感染できる細胞があるところまで到達できずに、咳、痰と一緒に外に出されてしまっては感染できません。免疫システムで排除されてしまう事もあります。〜イ涼奮でも、体内で増殖するよりも減っていくスピードの方が早ければ、病気にはなりません。今回の論文で見ているのは、△良分だけですが、もし感染できる細胞の近くに到達したウイルスの99%が細胞に結合できたとすると、どうでしょうか。結合力が10倍向上して、近くに来たウイルスの99.9%が結合するようになっても、,涼奮をクリアするウイルスが1%なら、,鉢△鬟リアする確率が、0.99%から0.999%に上がるだけで、ほとんどわからないような違いですが、,涼奮をクリアする確率が上がるような変化は、大きな意味を持ちます。このような段階を、律速段階と言います。

 

さらに、一つずつの変異では、差がなかったり、機能が低下してしまっても、複数組み合わせると、機能が向上することもあります。そこまで来ると、組み合わせの数がさらに膨大になり、体系的な実験を行うのは困難になります。しかも、機能が向上することが、ウイルスにとって有利とも限りません。ウイルスにとって、宿主(人間)が死なない程度に、増殖できるのが増殖には一番有利です。ウイルスは、将来を考えて進化しているわけではないので、短期的には強毒性株が増える可能性も十分に考えられます。

 

このように、これだけ膨大な実験を行っても、実際の感染力、病原性を推測するのはとても難しいというのが、現在の技術の限界です。しかし、今後、この結合部分を阻害するようなワクチンが開発されたときに、ワクチンの効きにくいタイプを予想するなど、基礎的なデータとしてこの実験は重要な意味を持ちます。

 

2020/8/16 外山

 

変異新型コロナウイルスSタンパク質の発現量と結合力。機能が低下した変異は赤、向上した変異は青で示している。横軸は変異を導入した場所。縦軸は改変後のアミノ酸。https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.06.17.157982v1.full より画像を取得

 



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