遺伝子組換作物について知ろう

人工的に作られた納豆菌は危険?

「市販の納豆は、遺伝子操作された納豆菌が使われているので、危険なんですか?」
 こんな質問を何度か受けました。こんな事を聞くと不安になると思います。実際は、どうでしょうか?完全に白黒つける事はできませんが、発酵に使う菌の改良(育種といいます)が、どのように行われているか理解して判断して下さい。納豆菌に限らず、多くの発酵食品でも同じ事です。

 

その前に、納豆菌とは

 枯草菌の中で、納豆を作る事のできる菌。種類はたくさんいますが、納豆製造に使われているのは、概ね3種類(宮城野菌、高橋菌、成瀬菌、+大手は独自の菌を使う場合もある)

 

都合の良い菌にするための方法
純粋培養

 わらの中には、いろいろな納豆菌や、納豆を作るのに適さない枯草菌も混ざっている。また、たとえ同じ田んぼから取ってきたわらでも、毎年同じ菌が同じ量いるわけではない。発酵の早さ、糸引きの強さ、臭い、味など毎回変わるので、製品として作るには問題があるので、単一の菌として分離した多くの菌の中から、良いものを選んで使う。

 

変異導入
 納豆菌の遺伝子に変異をかけて、性質を変化させたものの中から、良い菌を探す。変異をかける方法としては、紫外線、変異剤、放射線など、ガンを起こすものを使用する。但し、変化した菌から良いものを選ぶ過程で、変異剤などは無くなる。基本的には、自然界でも起こっている事の頻度を高めているだけなので、長年使われてきて問題の無い菌(少しずつ性質の違うものを知らずに使っていた)が、突然危険なものになる事は考えにくい。
 但し、短期間に多くの種類の菌が得られるので、少し良くなったものに更に変異をかけて使用する事が多い。

 

遺伝子組換え
 遺伝子の機能から予測して、人工的に遺伝子を変える。目的の遺伝子をピンポイントに変化させる事ができる。但し、100%目的以外のところが変化しないとは限らない。
 また、元々持っていなかった遺伝子を入れる事もできるので、大きな変化を起こす事ができる。遺伝子を受け取る方も、供給する方も、どちらも毒物を作らなかったとしても、元の菌には存在しなかった物質と反応してしまう可能性を排除する事はできない。


危険性を無視して製造側の都合だけで考えると
    純粋培養ができなかった時代は、自然のわらをそのまま使っていたので、毎回同じものができなかった
    自然の菌から選ぶ様になってある程度目的の性質の菌を使える様になったが、それぞれに一長一短があり、長所を兼ね備えた菌を探してくるのは難しい
    人工的に変異をかけると、長所を残したまま短所を補うような変化をした菌を探せるよう担ったが、選択に非常に手間がかかるので、時間がかかる
    遺伝子組換えをすると、選択する時間が非常に短く、変異だけでは作れない機能も持たせる事ができる。

ミツカンのにおわ納豆の例

目的

納豆の臭いの内、嫌なにおいの成分(短鎖分岐脂肪酸)を作らない様にしたい。

 

開発の流れ(→は、開発者の考え)

1.    納豆菌の全遺伝子配列の中から、「短鎖分岐脂肪酸」を作る遺伝子(ロイシン脱水素酵素)を見つけ、その遺伝子を壊すことを計画。この遺伝子を壊すと、短鎖分岐脂肪酸の無いところでは生きていけないが、納豆を作る上では必要ない。


2.    納豆菌が作る「短鎖分岐脂肪酸」を作る遺伝子(ロイシン脱水素酵素)を、組換え技術で破壊して、納豆を作ってみたら、臭いが少なかった。
→ この菌は、抗生物質耐性遺伝子など、元の納豆菌が持っていない遺伝子を持っているので、商品化はできない。


3.    抗生物質耐性遺伝子などの、外来遺伝子を含まない方法で、同じ遺伝子を破壊して、納豆を作ってみたら、やはり臭いが少なかった。
 → 遺伝子組換え体だけど、理論上元々納豆菌が持っている遺伝子以外は持っていない。一部の遺伝子が壊れているだけなので、変異をかけるのと同じだけど、遺伝子組換えなので消費者に受け入れられないのではないか。


4.    遺伝子組換えは嫌がられるので、従来の方法(変異導入)でいろいろな納豆菌を作る。この中から、短鎖分岐脂肪酸を含まない培地で生きられない納豆菌を選択する。
→ 何千、何万種類も納豆を作るよりずっと簡単だけど、遺伝子組換え体ではないので問題ない


健康に害は無いのか?

  1. 納豆は、長い間食べられてきていて、問題にはなっていない。自然のわらを使っていると、いろいろな変異の入った納豆菌が使われていたはずなので、変異をかけても毒性のあるような納豆菌になる可能性は低い
  2. 純粋培養した菌は、自然の中では負けてしまう様な菌でも維持していく事ができる。例えば、上のにおわ納豆の菌は、「短鎖分岐脂肪酸」の無い環境では生きていけない。栄養が不足していると増殖できないので、自然の中では淘汰されてしまう。長い間食べられてきたと言っても、このように本来淘汰されるべき菌が毒物を作らない事は証明されていない。
  3. 自然に変化<人工的な変異導入<遺伝子組換えと言う順に、変化の速度が速くなる。この様な大きな変化は、想定外の事が起こった場合にも影響が大きくなる。

 すごく危険とは思いませんが、遺伝子組換えではないとか、外来遺伝子が無いというだけで、全く危険ではないとも思いません。

 

例えば、1988年から1989年にアメリカで起こったトリプトファン事件の場合、

  • トリプトファンと言うアミノ酸をサプリメントとして飲んだ人が38人死亡。1500人以上に健康被害が出た。
  • トリプトファン自体は、体に必要な物質だが、大量に飲むと影響がある
  • 問題を起こした製品は、遺伝子組換えで、トリプトファンを大量に作るように改変されたバクテリアを使用して製造された(トリプトファン合成に関わる複数の遺伝子を改変)。
  • 問題を起こした製品には、遺伝子組換えではない方法で製造した場合には存在しない不純物が含まれていた

 結局、原因物質は特定されていませんが、「遺伝子組換えを何度も繰り返して、極端に多くのトリプトファンを作るようにした事で、想定外の物質がいくつかできてしまった」事が原因だと考えられます。それぞれの物質単独や、実験をした範囲の組み合わせでは、はっきりとした影響は確認されませんでしたが、

‖舂未飽むと問題のあるトリプトファンを、サプリメントと言う形で通常の食事では有り得ないほど飲んだ

▲肇螢廛肇侫.鵑瞭農を増強するような不純物が複数含まれていた

という事が積み重なって起こった事だと考えるのが自然です。遺伝子組換え体の問題では、外来遺伝子が問題にされる事が多いのですが、外来遺伝子が無くても、生物の体の中のバランスは崩れて、以下のような事が起こりえます。

 

    AをBに変える酵素を増やすとBがたくさんできる。
→この酵素は、A以外の物質とも少し反応してしまうので、B以外にも想定外の物質が増える事がある
    CをEに変える酵素を働かなくする
→本来ある程度の濃度に保たれていたCが大量に蓄積する。少しだけCと反応する酵素が作ってしまう副産物が大量にできてしまう事がある
    蓄積した物質が他の遺伝子を強めたり弱めたりする。
→遺伝子の制御は複雑すぎて、まだ予測できるほどの技術は無い

 

 もし、,筬△離院璽垢覗えてしまう副産物に毒性があったとしたらどうでしょうか?元々は、ほんのわずかにしか作られず、問題が無かったのに、健康を害するぐらいの量になってしまう事も考えられます。

 遺伝子の本体がDNAである事がわかり、遺伝子からたんぱく質が作られ、様々なたんぱく質の機能がわかるようになりましたが、まだ、どんな機能なのか判っていない遺伝子もたくさん有ります。また、機能がわかっている遺伝子も、別の機能が有ったり、本来の機能とは違う事を少し行っていることは珍しくありません。生物は、完璧に制御されているわけではなく、大きな影響が無ければ無駄な事もたくさん行っています(無駄を無くす為の遺伝子を追加していく方が無駄)。結局のところ、実際に使ってみて初めてわかる事もたくさんあります。

 

 菌の育種に話を戻すと、

自然に変化したものから選別して純粋培養 > 人工的に変異を導入 > 遺伝子組換え 

と変化のスピードが速くなっています。自然のままでも、リスクはありますが、急激な変化は、想定外の事が起こった場合に、影響が大きくなってしまいます。トリプトファン事件でも、1段階ずつ大勢の人のデータを確認していれば体調を崩す人がいたとしても、大勢の死者を出す程にはならなかったかもしれません。もちろん、製品化の前に安全性の評価を徹底する事が大前提ですが、安全性評価は絶対ではないと言う意識も必要です。


 実際に、多くの発酵食品が、純粋培養された菌を使って安定した製品を作っている事、そして、大きな問題は起こっていないと言う事実は有ります。更にお酒など、人工的に変異を導入した微生物もたくさん使われています。実際に、この様な技術が大きな問題を起こす事はまれで、全て危険だとは思いませんが、安全性の確認がきちんと行われているわけでもありません。どこに線引きをするのかは非常に難しいですが、正しい知識として理解して判断して下さい。

 

2017/10/12 外山



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