精製油、油脂・脂肪酸について知ろう

植物油脂及び食品中の加工汚染物質 −パーム油には発がん性物質が多く含まれている−

原文:Process contaminants in vegetable oils and foods 

http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/160503a

 

食品安全委員会の食品安全情報: syu04470040149

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04470040149


 欧州食品安全機関(EFSA)は2016年5月3日、植物油類及び食品中の加工汚染物質類のリスク評価に関する報道発表資料を公表した。概要は以下のとおり。

  1. パーム油に含まれている加工汚染物質類が、若齢者に潜在的な健康懸念を引き起こしている
  2. これらの物質*は、食品加工中(特に植物油の高温(約200℃)での精製中)に生成される
  3. グリシジルエステル並びに3-MCPD及び2-MCPD(それらのエステル類を含む)の濃度が最も高いのは、パーム油脂類で、その他の油脂類からも高濃度で検出された。3歳以上の消費者の主なばく露源は、マーガリン類及びケーキ類であった。
  4. グリシジル脂肪酸エステル類 − 遺伝毒性及び発がん性がある −
  • グリシドールに遺伝毒性と発がん性があるという十分な科学的根拠があるので、CONTAMパネルは、GEについて安全なレベルを設定しなかった
  • グリシジルエステルは、平均的ばく露量の若齢群及び高ばく露量の全年齢群にとって潜在的な健康懸念である、とCONTAMパネルは結論づけた。
  • 乳児用調製食品のみを摂取している赤ん坊のGEへのばく露量は、リスクが低いと考えられるばく露量の10倍にまで達するため、特に懸念される
  • 製造者らがとった自主的な対策によって、パーム油脂類中のGEの濃度が2010年から2015年の間に半減した
  1. 3-MCPDへのばく露量は、安全なレベルを超える。2-MCPDはデータ不足
  • 3-MCPDとその脂肪酸エステル類について耐容一日摂取量(TDI)を0.8μg/kg体重/日と設定した
  • 2-MCPDについて安全なレベルを設定するには、毒性学的知見が限定的すぎるので評価は見送り
  • 若い人の3-MCPDへの推定平均ばく露量及び推定高ばく露量は、TDIを超過 (安全とは言えない)
  • パーム油は、ほとんどの人々にとって3-MCPD及び2-MCPDへのばく露への主要な寄与食品
  • 植物油類中の3-MCPD及びその脂肪酸エステル類の濃度は、過去5年間にわたりほぼ横ばいであった。
  1. 次はどうなる?

今回のリスク評価は、欧州連合(EU)の食品安全を取り締まる欧州委員会(EC)及びEU加盟国のリスク管理機関に通知される。それらのリスク管理機関は、食品中のこれらの物質へのばく露に起因する消費者への潜在的リスクを管理する方法を検討するためにEFSAの科学的助言を用いることになる。また、CONTAMパネルは、(1)データ不足を埋め、(2)これらの物質類(特に2-MCPD)の毒性に関する知見及び食品を経由したこれらの物質に対する消費者のばく露量に関する知識を向上させるため、更なる調査を求めるいくつかの勧告を策定している。

 

*これらの物質:グリシジル脂肪酸エステル類(glycidyl fatty acid esters: GE)、3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-monochloropropane-1,2-diol: 3-MCPD)、2-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(2-MCPD)、3-MCPD 脂肪酸エステル類(fatty acid esters)及び2-MCPD 脂肪酸エステル類

 

(解説)

 パーム油は、世界で一番多く消費されている油です。植物性の油としては珍しく、飽和脂肪酸を多く含む為、加工用として使いやすく、水素添加をしない(トランス脂肪酸が非常に少ない)マーガリンやショートニングの原料としても、使用量が増えています。名古屋生活クラブでも、トランス脂肪酸を減らす為に、パーム油を使用した製品が多くなっていますが、世界的に熱帯雨林の破壊など、環境への影響が問題になっています。このパーム油は、高温で精製する必要があるので、グリシジル脂肪酸エステル(エコナで問題になった物質)、クロロプロパノール類(たんぱく加水分解物を塩酸分解で作るときにできてしまう物質)ができてしまいます。今回のEFSAによる評価によると、平均的な若い人(子供)でも、現在の摂取量は安全なレベルを超えていました

 

パーム油中の発がん性物質の濃度 EFSA Journal 2016;14(5):4426 [159 pp.]

 

平均濃度

 (μg/kg)

備考

3-MCPD

2,912

醤油に使用されている自家製アミノ酸液の平均670μg/kg (2011年農林水産省の調査)

グリシドール

3,955

エコナは、91,000 μg/kg 2009年 花王

 

 アミノ酸液は、たんぱく質を分解したものなので、たんぱく加水分解物なのですが、日本では大豆・とうもろこし・小麦等の植物性たんぱく質を分解したものを、「アミノ酸液」と呼んでいます(日本アミノ酸液工業会HPより)。特に小規模業者が自家製で作る場合によくみられる「塩酸分解法」は、発がん性物質である3-MCPDの濃度が高くなります。この為に、(株)名古屋生活クラブでは塩酸分解法で製造したたんぱく加水分解物は取り扱い禁止にしています。アミノ酸液中の3-MCPDについては、製造方法が見直され、市販品では50 μg/kg程度まで下がっています。自家製も、2004年には平均8,400 μg/kg、最大44,000 μg/kgでしたが、2011年には平均670μg/kgまで改善されています(いずれも、農林水産省による醤油を対象とした実態調査)。

 

 パーム油には、対策が取られる以前のアミノ酸液に匹敵する濃度の3-MCPDが含まれています。毒性がわかった以上、取り扱い禁止とするべきでしょうか?アミノ酸液(たんぱく加水分解物)は、「出汁をしっかりとる」「きちんと発酵させる」といった丁寧な仕事をしたら使う必要の無いものです。一方、パーム油の発がん性物質は、自然のものを食用に加工するときにできてしまうものです。毒性の強さだけで「食べるべきではない」と判断してしまえば、わかりやすいかもしれませんが、それで良いでしょうか?

 パーム油自体、昔から人間がたくさん食べてきたものではありません。「安い」「使いやすい」「トランス脂肪酸の低減をアピールできる」といった理由で、パーム油の使用量が非常に多くなっていて、その事が新たなリスクを作り出している事も事実ですが、「リスクのあるもの(トランス脂肪酸)を減らしたい」という気持ちでパーム油の使用量を増やしてきた生産者もいます。パーム油による健康リスクを抑える為には、精製時に出来るだけ高温に長時間晒さない、高温にする前に塩素を除去するなど、精製方法を工夫したパーム油を使用したり、パーム油を別の油に変える等の対策も必要になってきますが、対策にはコストがかかります。この様なコストをかけても、対応しようと考える生産者は、トランス脂肪酸の問題を棚上げにしてきた生産者ではなく、パーム油の使用が増えてきた生産者の中にいるはずです。

 毒性があるから食べないというのではなく、より良いものを作ろうと考える生産者と協力して、少しでも良くしていく事が大切ではないでしょうか。

外山

 

国別パーム油生産量の推移同志社大学人文学研究所 林田秀樹順教授 パーム油生産の急増とその需要側要因について より 



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