農薬について知ろう

食品安全委員会による農薬評価(グリホサート)に対する考え方

2016年7月 食品安全委員会から、「グリホサート」の農薬評価書が公表されました。日本の食品の安全を守る機関の評価というのが、この様な考え方で行われているという事が良くわかりますので、紹介します。細かい部分を読みたくない人は、途中を飛ばしても構いませんので、最後の部分について考えてみて下さい。

 

------ここから評価書抜粋------

アミノ酸系除草剤である「グリホサート」には原体製造業者が複数存在し、原体ごとにそれぞれ毒性試験成績等が作成されている。このため、原体と毒性試験成績 等の組み合わせをグリホサート 銑イ箸靴討修譴召貮床舛鮃圓辰疹紊如∩躪臧床舛鮗損椶靴拭8鎚未良床舛砲弔い討呂修譴召貘莪貮堯疎荼淺堯畜産動物に関する試験成績は第 六部にそれぞれ示されている。また、2015 年 7 月に IARCが「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(Group 2A)としたことを受け、食品安全委員会においてその取扱いについても議論がなされた。 IARCでは公平性、透明性を担保するとの理由で、公の場で入手可能な学術論文等を用い、ハザードの同定のための評価がなされている。一方、食品安全委員会を 含むリスク評価機関においては、国際的に合意されたテストガイドラインに従って、主にGLP 試験として行われた試験成績を用い、ヒトに対するリスクを評価することを目的としており、グリホサートに関しても、他の農薬と同様の手法により評価を行い、結論を出すことが確認された。なお、参考として「国際機関等における評価」の項目を設け、最近評価が終了した IARC 及び EFSA の評価概要を掲載した。

 

中略

 

9.総合評価

 

中略

 

グリホサートを用いた各種毒性試験結果から、グリホサート投与による影響は、 主に体重(増加抑制)、消化管(下痢、盲腸重量増加、腸管拡張、腸管粘膜肥厚 等)及び肝臓(ALP 増加、肝細胞肥大等)に認められた。神経毒性、発がん性、 繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった。

 

この後は省略

 

------ここまで------

 

中断部分を見てください。2015 年 7 月に IARC が「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(Group 2A)としたことを受け、食品安全委員会でも議論がされました。

 

IARC:公の場で入手可能な学術論文 等を用いて評価

食品安全委員会など:国際的に合意されたテストガイドラインに従って評価

 →発がん性は認められなかった

 

リスクを評価するうえで、実験方法がばらばらでは、「本当は毒性が有るのに、その毒性が現れる実験をしていない為に毒性を見落とす」という事が起こります。新しい農薬を世の中に出すには、メーカーが毒性試験を行う事が義務付けられていますが、意図的に毒性が出る実験を行わないで、「毒性が見られなかった」という結果のみをたくさん出してごまかすかもしれません。その様な事がないように、どのような実験結果を出すべきか、国際的にガイドラインが作られています。

ガイドラインに従うという事は、悪くないと思います。しかし、このグリホサートの評価はどうでしょうか?

ガイドラインは、実験の不備や、意図的な隠蔽を防ぐ為のものです。しかし、ガイドラインに従っていれば、完璧でしょうか?ガイドラインに沿った実験では見落としてしまう事もあるはずです。それなのに、ガイドラインに従って行われた実験結果のみを採用し、他の知見は無視して「発がん性は認められなかった」としてしまっています。

 

更に、この件について、パブリックコメントでも指摘されていますが、食品安全委員会からの回答は、

 

------以下、食品安全委員会の回答------

食品安全委員会では、海外の評価機関 による評価書等も参照していますが、原則として提出された試験成績を用いて食品健康影響評価を行っています。 グリホサート 銑イ納損椶気譴身がん性試験及び遺伝毒性試験の結果からグリホサートには発がん性及び遺伝毒性は 認められなかったと判断しました。 ご指摘のように、IARCにおいてはグリホサート製剤と非ホジキンリンパ腫との関連が認められることから、ヒトで限定的なエビデンスがあるとし、Group 2Aと 評価しました。IARC自身も述べているように、これはあくまでもハザード評価であり、ヒトに対するリスクを述べたものではありません。 一方、食品安全委員会を含む各国及び 国際的なリスク評価機関においては、国際的に合意されたテストガイドラインに従って行われた、主にGLP試験の成績を用い、ヒトに対するリスクを評価することを目的としています。 EFSAではグリホサート製剤と非ホジキンリンパ腫の関連についてのエビデンスは非常に限定的であり、ヒトの調査研究におけるグリホサートと癌の因果関係は結論づけられていないと評価しています。加えて、本年 5 月に開催された FAO/WHO 合同残留農薬専門家会合(JMPR)においても、グリホサートはマウスでは極めて高い用量で発がん性を有する可能性を排除できないものの、ラットでは発がん性を有さないこと、職業ばく露由来の疫学調査結果を考慮しても、食品を介した農薬の摂取においては、 グリホサートはヒトに対し発がん性を示さないと結論づけています。 食品安全委員会においてもアメリカのAHS(Agricultural Health Study)による人に対する疫学調査について議論が行われましたが、グリホサートの暴露量の情報がなく再現性も不明であることから評価には用いておりません。食品安全委員会で審議された剤のうち、公開で審議された農薬の審議資料(農薬抄録等)は食品安全委員会終了後に食品安全委員会事務局内において閲覧可能となっており、グリホサートについても閲覧できます。 なお、当該審議資料について、公にすることにより試験成績所有者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある部分については、非公開としております。

------ここまで-------

 

パブリックコメントの回答にも有るように、「因果関係は結論付けられていない」「暴露量の情報が無く、再現性も不明」という理由から、「発がん性無し」という結論が導き出されています。「発がん性が無い」のではなく、「証拠が不十分で判断できない」なら、まだわかりますが。

 

この評価書には、グリホサートの発がん性の問題よりはるかに重要な事が書かれています。冒頭部分やパブリックコメントへの回答で赤字で示したように、食品安全委員会は、国民の健康を守ることが目的ではなく、「ガイドラインに従って評価する事」が目的だと書いてあります。

「厚生労働大臣から評価依頼が来たので、マニュアルどおりにやりました。それ以上の評価をする義務はありません。」

ということですね。農薬、添加物などは、「安全性が確認されたものしか使われていない」という説明が良くされますが、「安全性が確認された」とはこの様な評価に基づいて確認したという意味です。消費者もそのつもりで判断する必要があります。

2016/8/30 外山



名古屋生活クラブ

  〒452-0802 名古屋市西区比良2-120 フリーダイアル:0120-72-0251
TEL:052-501-0251 FAX:052-503-0967 e-mail: nsc@athena.ocn.ne.jp >>会社概要はコチラ