放射線について知ろう

核融合科学研究所の重水素実験について

2017年3月7日から、岐阜県土岐市にある自然科学研究機構 核融合科学研究所​で、重水素を使用したプラズマ実験が開始されました。この実験では、放射性物質であるトリチウムが発生し、回収しきれずに環境中に放出される事から、心配な方も多いと思います。実際には、どれくらい危険なものなのでしょうか?

いろいろなデータを比較してみた結論としては、この実験自体は健康被害を出すようなものではないと思いますが、核融合発電の実用化には、問題があると思っています。

 

トリチウム排出、発生量の比較

排出量(または生成量)

(ベクレル/年)

備考
核融合科学研究所 3.7〜5.5×1010 370〜550億 生成量
福島第一原発 2×1012 20,000億 放出量 2008年(合計約500万kW 沸騰水型軽水炉)
沸騰水型*1 2×1013 200,000億 蓄積量 100万kWあたり
福島第一原発 3.4×1015 34,000,000億 放出量 事故後に放出(2014年3月25日時点の推計)
玄海原発 1×1014 1,000,000億 放出量 2010年(合計約350万kW 加圧式小型軽水炉)

加圧式小型軽水炉*1

2×1014 2,000,000億 蓄積量 100万kWあたり
ピカリング原発 8.4×1014 8,400,000億 放出量 カナダ(合計770万kW 重水原子炉)
六ヶ所村再処理工場 1.3×1015 13,000,000億 放出量 2008年(アクティブ試験)
2.0×1016 200,000,000億 放出量 実際に800トン処理した場合
水爆実験*1 2×1016 200,000,000億 1954/3/1 ビキニ環礁
核融合発電*1 4.7×1019 470,000,000,000億 使用量 100万kWあたり
天然*1 9.6×1017 9,600,000,000億 地球全体

*1:原子力資料情報室より

 

降雨1Lあたりのトリチウム濃度

(ベクレル)

核兵器爆発前*1

0.2〜1

1960年代*1 100
現在*1 1〜3
2007〜2016年*3 不検出〜1.2

*3:環境放射線データベースから、東海4県のデータを集計(2017/3/14現在)

 

 原子力発電所や再処理工場から、非常に多くのトリチウムが排出されていて、トリチムが多く発生する重水原子炉が多く稼動しているカナダでは、原子力発電所周辺の住民に、ダウン症、新生児死亡、小児白血病の増加が指摘されています。日本の原子力発電所は、カナダよりは少ないといっても、この数字を見て安心とは思えません。そして、六ヶ所村の再処理工場では、本格稼動前のアクティブ試験の段階でさえカナダのピカリング原発を越えるトリチウムを放出し、他にも炭素-14、クリプトン-85などが放出されます(実際に稼動しているセラフィールド(イギリス)では、周辺作物の炭素-14濃度が上がっている事が報告されている)。

 現在の地球上のトリチウムは、大気圏内核実験が行われていた時代に比べると減ってはいますが、過去に比べるとまだ多い状態が続いている事を考えると、できるだけ出さない方が良いと思います。しかし、核融合科学研究所​での重水素実験自体は、周辺住民に健康被害が出るとは思えません。少しなら良いというわけでは有りませんが、この実験で排出されるトリチウムの被害を心配するより、もっと大量にトリチウムが垂れ流されているという問題。それを止めるのではなく、未だに継続しようとしているという大きな問題があります。そして、核融合発電に関しては、現在のような実験レベルではなく、実用レベルで稼動した場合には、たったの100万kwで、地球全体で天然に作られるトリチウムの50倍も使用します。これを、きちんと管理する事が可能なのか、非常に疑問に思います。

 

現時点では、(株)名古屋生活クラブとしては、

 核融合発電の実現には安全性にも疑問があり、慎重に見守る必要がありますが、実験自体に反対するほどではない。但し、実験を行ったという既成事実から、強引に実用化することは、許されない。

と考えています。自由な研究と、産業化した場合のリスクに対する抑制がうまく働いて、良い世の中になる様に活動していきたいと思っています。 (外山)

 

福島第一原発避難エリア内で放棄された牛の体内の人工放射性物質

Distribution of artificial radionuclides in abandoned cattle in the evacuation zone of the Fukushima Daiichi nuclear power plant
福島第一原発避難エリア内で放棄された牛の体内の人工放射性物質
Tomokazu Hukuda 東北大学
PLOS ONE   January2013 volume8
 
福島第一原発から20Km圏内の79頭の牛の臓器中の放射性物質濃度を測定した。検査したすべての臓器からセシウム -134とセシウム -137が検出された。さらに、臓器特異的に肝臓から銀 -110m(半減期249.8日)、腎臓からテルル -129m(半減期33.6日)を検出した。
胎児(牛)と幼児(牛)からは母牛のそれぞれ1.19倍、1.51倍のセシウムが検出された。
 
方法と結果
2011429日から1115日にかけて、79頭の牛を捕獲した。地域別では、南相馬27頭、川内村52頭。
3地点で捕獲した。
地点1 南相馬 牛舎内にいた 未汚染の飼料 汚染した水
地点2 川内村 放し飼いにされていた(汚染)
地点3 南相馬     〃
 
  • 銀とテルルの両方とも胎盤を通過できるが、胎児の臓器からは、銀 -110m、テルル -129mとも検出されなかった。
  • バンダジェフスキーの研究で報告されている内分泌器官、とくに甲状腺のセシウム蓄積は、我々の研究ではみられなかった。
  • ウクライナのセシウム -137汚染地域の人々の膀胱の尿上皮に増殖性の細胞がみられたり、慢性的な炎症がみられることの報告があった。しかし我々の研究では、膀胱に比較的高いセシウム蓄積が見られたが、今までのところ目視では異常を見つけられなかった。
  • チェルノブイリ事故後に羊の肝臓に、セシウム以上の銀 -110mの蓄積が報告されている。
福島第一原発事故後、大量のテルル -132が放出された。初期には、テルル -129mより高い濃度のテルル -132が避難エリアで検出された。テルル -129mが腎臓に蓄積していることから、同様にテルル -132も事故後、すぐに腎臓に蓄積しただろう。テルル -132の半減期は3.2日で、ヨウ素-132に変わる。ヨウ素 -132は甲状腺に蓄積する。以前に行われた研究でも、牛に経口投与された放射性テルルはヨウ素 –132になり、甲状腺に蓄積した。これらの研究は甲状腺のリスク評価に当って、ヨウ素 -131と同様にテルル -132にも注意する必要性を示している。
蓄積量
 

解説
セシウムの体内分布については、以前の動物実験で筋肉を中心に全身に均一に分布するといわれていたものの、バンダジェフスキーの研究で、内分泌器官にかたよって分布するという人での研究もあり、正確な研究が必要とされていました。今回の研究結果でも、以前の動物実験での結果と同じ結論−筋肉を中心に全身にまんべんなく分布する−ことが確かめられました。もう少し詳しい研究が必要ですが、セシウムに関して、どこかの器官に濃縮するという可能性はかなり低く、現状では気にする必要性は少ないと思います。
しかし、今回の研究で気になるのは、テルル -129m、テルル –132です。経済産業省の平成231020日の報告によると(http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111020001/20111020001.pdf)、福島第一原発から放出された量として、
放出量
となっている。テルル -132はテルル -129m26.7倍放出されており、テルル –129mが腎臓に7000ベクレル/Kg蓄積していたことから、その26.7倍の蓄積の可能性があり、そのテルル -132がヨウ素 -132に変わって甲状腺に移行して被曝をもたらしていた可能性があります。
テルル -132はセシウム -137、セシウム -134の合計量の2.7倍放出されており、半減期78.2時間でヨウ素 -132に変わります。

ラットにヨウ素131を投与する時のバルバドスチェリー(アセロラ)の防御効果

Radioprotective effect of the Barbados Cherry against radiopharmaceutical Iodine-131 in Wistar rats in vivo
ラットにヨウ素131を投与する時のバルバドスチェリー(アセロラ)の防御効果
Dusman マリンガ州立大学 ブラジル                         
BMC Complementary and Alternative Medicine 2014,14:41
 
背景
放射性同位体ヨウ素-131などの放射線やフリーラジカルによって生じるDNAの酸化的障害を抗酸化物質は減少させる。
ヨウ素-131は甲状腺の障害とガンに対する診断と治療に使われている。
この研究の目的はビタミンC、フェノール類、カロテノイド、アントシアニン、フラボノイドなどの抗酸化成分が多いアセロラジュースの放射線防御効果と細胞毒性を評価することです。
 
方法
1回の甲状腺こう進症の治療に使われる放射性ヨウ素-131に相当する量(体重100 gあたり、25マイクロキュリー=925000ベクレル)の突然変異原性に対し、体重100gあたり5mgのアセロラを投与して抑制を調べた。この実験では、ヨウ素-131、アセロラは胃管で生体に投与し、ウイスターラットの骨髄細胞を用いて評価した。
 
結果
アセロラジュースは放射性物質に対して防御した。
アセロラジュースは細胞毒性を示さなかった
 
解説
甲状腺ガン、甲状腺こう進症の治療に放射性ヨウ素-131を使う場合があります。その時の濃度100g当たり925000ベクレルと同じ濃度でラットに投与し、アセロラジュース1mlが突然変異を抑えるかどうか見た実験です。
100g当たり925000ベクレルは、体重が50Kgとしたら46250万ベクレル/50Kgの投与ということです(ヒトに対して)。ヨウ素が甲状腺に集まるため、そこで甲状腺ガンなどの細胞を殺そうというものです。ヨウ素-131はベータ線と、ガンマ線を放出します。ベータ線、ガンマ線ともに活性酸素を生成し、それが遺伝子DNAなどを切断します。多くは修復されたり、修復できなかった細胞はアポトーシス(細胞の死)が誘導されます。誤って修復された遺伝子を突然変異として検出します。ヨウ素-131のみの投与後、24時間のラットの骨髄、細胞の突然変異率(染色体異常を見ています)4.3%に対し、同時にアセロラジュースを投与した場合、1.2%にまで減少しています。
この減少率が適正かどうか、僕には判断できませんが、放射線の影響といえども抗酸化物質がある程度、役に立つことは確かなようです。(伊澤)
 
外山注釈
この論文の結果には、以下の点で少し疑問があります。
  1. 下記の図にあるアセロラのみ、ヨウ素131のみのデータは、別の論文からの引用です。同じ著者によるものですが、同時に実験したのか、別の日に実験したのかわかりませんので、実験方法に問題があった可能性が否定できません。
  2. アセロラのみを投与する事によって、突然変異率が0.3%から0.8%に上昇しています。誤差を含みますが、この量のアセロラ(体重100 gあたり、0.5%のアセロラジュース1 ml50 kgの人なら、5%のアセロラジュースを50ml飲むぐらい)には、この実験のヨウ素131の投与量の1/10の突然変異率と同等であると考えられます。これが事実であるとすると、低線量の放射線に対して、アセロラを摂取することは逆効果となってしまいます。

以上のような疑問も有りますが、アセロラの成分(おそらく抗酸化物質)が、放射線による影響をある程度軽減する事が出来るという事は、かなり信頼性が高いと考えられます。(外山)




 
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