環境・環境汚染について知ろう

環境悪化と化学物質が野生生物に与える影響

論文で紹介します

野生生物が環境悪化
Environ Toxicol Cltem ,2004


今回はアメリカのなまずのガンの論文を紹介します。


ワシントンD.Cにあるアナコスティア川(きたない川)と、メリーランド州にあツカホエ川(きれいな川)のなまずの肝ゾウガン、皮フガンが調べられました。
 

肝ガン 皮フガン
アナコスティアのなまず 3年物 50-68% 13-23%
アナコスティアのなまず 1-2年物 10-17% 0
ツカホエ川のなまず   3年物 0-3% 0
ツカホエ川のなまず   1-2年物 0 0


という驚くべき発ガンが明らかになりました。


それぞれのDNA(遺伝子)を調べた所、アナコスティアの方がツカホエに比べ16~28倍ものDNA添加物(DNAに余分な物がくっついている→突然変異ガンの原因)がありました。

又、けい光物質(合成洗剤に入っている)の様な、化合物がたくさん見られました。


Environ Toxicol Cltem ,2004, から

私達は、川や海や田んぼが汚れ、生き物が少なくなってしまっている状況になれっこになってしまっています。

生き物からの声なきけいこくに耳をすませ、想像力を働かせましょう。

化学物質と人類はよほど抑制が働かせないとこのままでは大変なことになってしまう気がします。

無関心、慣れが、恐ろしい。

(2004/1/1 掲載)

はまぐりを使った水道水の環境汚染物質の実験

A mixture of environmental contaminants increases cAMP-dependent Protein Kinase in Spisula embryos.
Spisula(はまぐり)の胚のサイクリックAMP依存プロテインキナーゼを上昇させる環境汚染物質
Carol L. Reinish 海洋生物研究所
Environmental toxicology and pharmacology 2004


アメリカ環境保護庁(EPA)は、ブリック(ニュージャージー州)のごみ埋立地を「スーパー ファンド サイト」として、1983年9月8日登録した。

ブリックは、この決定を町の水道水の高い汚染と、この町での自閉症の子供が他に比べて割合が高いことで受け入れた。(アメリカ国内の平均の2倍)

ブリックの水道水を、1999年1月に採水して調べたところ、神経毒性があるプロモホルム、クロロホルム、テトラクロロエチレン(他にもあるが)が見つかった。

これらの神経毒性は大人では知られていないが、胚の神経発達への影響は調べられていません。

テトラクロロエチレンは、ドライクリーニングで一般に使われている溶剤です。

高レベルのテトラクロロエチレンにさらされた労働者は、神経毒性を示します。神経毒性は、行動異常、記憶、神経機能など広い部分に及びます。

ラットでの、詳細な研究は、高濃度のテトラクロロエチレンは、全般に及び、神経系の抑制をもたらします。

また、低量でさえ、発生に微妙な不可逆的な変化を胚の神経系にもたらします。


解説

今回の実験は、はまぐりの胚を使って、ブロモホルム、クロロホルム、テトラクロロエチレン、この3つの汚染物質(ブリックの水道水を汚染していた)の影響を調べました。

ばくろ露は、サイクリックAMP依存プロテインキナーゼの調節サブユニット(R11)の上昇をもたらしました。

このR11の上昇は、繊毛の活動の増加につながっていました。

これらの影響は、3つの物質が同時にある場合のみ現れて、この中の2つ、もしくは単独では影響がありませんでした。

ブロモホルム、クロロホルム、テトラクロロエチレンの3種が相乗作用して、神経の発生に影響を与える、初めての報告です。

(2006/9/19 掲載)

生活排水から琵琶湖へ流れ込む微量化学物質

『生活排水から琵琶湖へ流れ込む微量化学物質』―蛍光増白剤の研究報告―
早川和秀・山路修久(1)・高田秀重(1)・山元博貴(2)・藤原学(2)
(2)龍谷大学理工学部?(1)東京農工大学農学部 琵琶湖研究所所報


これは、生活排水として琵琶湖へ流れ込む蛍光増白剤の分布や濃度について検討した研究報告です。


蛍光増白剤とは、紫外線を吸収して青紫色光線を発する化学物質であり、製品を白く鮮やかに見せる染料として、衣料用合成洗剤や衣類や紙やプラスチックなどに添加されています。また、皮膚刺激やアレルギー反応を引き起こす化学合成物質とされ、原料であるスチルベンには内分泌攪乱作用があります。蛍光増白剤は下水処理場において完全に除去できず、河川から検出される特徴から、蛍光増白剤が生活排水に含まれる難分解性化学物質の指標と成り得ることが注目されています。著者らは国内で主に使用されている蛍光増白剤の内、DSBPとDAS1の河川水中および湖水中の濃度や分布について検討しています。


まず、野洲川流域(本流および各支流の計15ヵ所)から採水し、調査したところ、本流に比べ支流の方がDSBPおよびDAS1の濃度が高いことがわかりました。このことから河川水中の蛍光増白剤の濃度は河川水量による希釈効果と流域の未処理生活排水量に依存すると考えられました。


次に、琵琶湖の北側と南側で採水し、DSBPとDAS1の濃度を調査し比較したところ、北湖に比べ南湖の方が数倍濃度が高いことがわかりました。これは、都市河川、下水処理排水が集中する点で南湖の蛍光増白剤濃度が高くなると考えられました。


最後に、湖底堆積物中の蛍光増白剤の分布について調査したところ、蛍光増白剤濃度は堆積表層に向かって顕著に増加していたことから、琵琶湖では蛍光増白剤の負荷量が年々増加傾向にあると考えられました。


今回検出された蛍光増白剤の濃度は非常に低く、毒性に関して危険性はほとんどないと判断されたが、低濃度ながら湖底まで到達していることが明らかになりました。これは蛍光増白剤だけでなく生活排水に含まれる難分解性の人工化学物質が琵琶湖に拡散している可能性を示しています。

(2007/5/10 掲載)

グリコールエーテル類 たくさん使われている毒性化学物質

論文で紹介します

Glycol ethers ? a ubiguitous family of toxic chemicals
グリコールエーテル類 たくさん使われている毒性化学物質
Andre Cicolella 危険性と産業環境 国立研究所? フランス (national institute of risks and industrial environment)
Ann.N.Y.Acad,Sci. 1076:784-789 2006


グリコールエーテル類は、1930年代以来、ペイント、インキなどの溶剤、クリーニングに、化粧品、薬に使われてきた化学物質です。

世界中での生産量は、約100万トン、動物実験の最初のデーターは、1971年と1979年で、ある種のグリコールエーテルの重い生殖毒性を示していた。1982年と1983年にそれぞれ2つの警告がアメリカで出されたのですが、実際に一部の規制がEUで始まったのは、1993年になってからでした。これらの物質は、多くの人々を曝露させているのですが、基本的な毒性データー、特に発ガン性に関しては、ほとんど無い(32種類の内、3種類だけ)。実験データーは、1980年代初めには、発生毒性を示す充分なデーターが存在しました。


最初の禁止は、1999年にフランスで薬と化粧品で行われた。1980年代後半には、動物実験と同様にヒトでも、流産、異形成、精巣毒性、血液毒性、などがわかった。一致している毒性のデーターや代替物があるにもかかわらず、生殖毒性のあるグリコールエーテル類はいまだに広く世界中で使われているのです。クリコールエーテル類の例は、リスクアセスメントの現在のシステムの欠陥を示しています。EUのリーチ規制(化学物質の規制)が「No deta. no market… データーのない化学物質にはマーケットが無い…安全データーの無い化学物質は使わせない」という原則に基づくべきだと嘆願する。

(2007/6/18 掲載)

化学肥料による重金属汚染

論文で紹介します

Arsenic , Cadmium , and Lead in California Cropland Soils:: Role of Phosphate and . Micronutrient Fertilizers
ヒ素、カドミウム、鉛がカルフォルニアの作土中に含まれている量: リン酸肥料、微量要素肥料の関与
Weiping . Chen カルフォルニア大学リバーサイド校
J Environ Qual . 2008 Mar-Apr : 37(2) : 689-95


リン酸肥料、鉄-マンガン-亜鉛などを含む微量要素肥料が収量を上げるために、定期的に散布されています。しかし、これらの肥料にはヒ素、カドミウム、鉛などが含まれています。カルフォルニア州食品農業部(CDFA)によると、カルフォルニア州で販売されているこれらのリン酸肥料と微量要素肥料にはヒ素が0〜85mg/kgの範囲でカドミウムが0〜5g/kg、鉛が0〜73.5g/kgの範囲で含まれています。一回の散布では、濃度の上昇などは検出できませんが、繰り返し散布することで時とともに、徐々にこれらのヒ素、カドミウム、鉛などが上昇していきます。研究者達は、リン酸肥料の散布がとくにカドミウム濃度の上昇を起こしてしまっていることを実証してきました。野菜の栽培は他の作物に比べかなり多量の肥料を必要としているので、野菜の畑には肥料に由来するこれらの重金属の蓄積という最悪の結果が考えられます。例えば、カルフォルニア州インペリアルバレーでは、野菜の生産では1ヘクタール当り563kgのリン酸アンモニウムを使っています。

土壌に重金属が増えると、食物連鎖を通して重金属の濃縮が起こることがあります。土壌中の濃度に比例して、植物体中の重金属濃度の増加が報告されています。ヒ素、カドミウム、鉛が作土中に増加する事から生じる危険性は健康に対する懸念をもたらしています。本研究の目的は、1967年にブラッドフォードが採取したカリフォルニア州50ヶ所の土壌(ベンチマーク土壌…基準土壌)を2001年に再採取し、それらの重金属量の測定をすることと、カリフォルニア州の野菜生産7地域の作土での重金属の分析と、カリフォルニア州での作土中のヒ素、カドミウム、鉛の増加へのリン酸肥料と微量要素肥料の関係を明らかにする事です。


結果

野菜生産7地域から1000以上の作土のサンプルを分析したところ、 重金属濃度が上昇していました。

リン酸の増加はリン酸肥料との、亜鉛の増加は微量要素肥料との関係が強いことがわかりました。

7地域の内1地域で

ヒ素、カドミウム、鉛が増加しており、リン酸と亜鉛の増加と関係していた (リン酸肥料、微量要素肥料、両方の関与)

7地域の内2地域で

ヒ素が増加しており、亜鉛が関係していた (微量要素肥料の関与?)

7地域の内残り4地域で

ヒ素、カドミウム、鉛の増加とリン酸、亜鉛との関係が見られない


 

表,カリフォルニア州50ヵ所の土壌成分の比較
1967年基準土壌 2001年基準土壌 2001年作土
平均値 最高値 平均値 最高値 平均値 最高値
ヒ素 8.8 20.5 7.6 16.6 7.6 18.4
カドミウム 0.18 0.44 0.22 0.53 0.50 2.38
12.0 25.0 14.6 26.8 15.6 62.2
リン酸 520 1127 616 1503 844 2620
亜鉛 69.2 143 75.9 124 68 145
※カドミウムが劇的に多いことがわかります。


解説

会社の田んぼに肥料と土壌改良材を入れようと調べていたらケイ酸の土壌改良材やリン酸肥料は製鉄会社が鉄を作るときに廃棄する資材から作っている場合が多いことがわかりました。食品安全委員会のホームページなどで資料をとると、それらの肥料や改良材中に高濃度の重金属(ヒ素、カドミウム、鉛、チタン、ホウ素)などが含まれていること、健康に対する影響はまずないと書かれていました。どうも信用できないので各国の論文を見たら、やっぱりいろんな論文がありました。この事情は日本だけのことではありませんが、関心を持っている科学者が日本に少ない事は確かです。

それにしても、農家は食い物にされていると、つくづく感じます。これらのこと以外にも肥料は知られていないだけで問題の多い所です。下水汚泥肥料なども知らないうちに使っているのです。不純物の量の表示や原材料の表示がない事が一番の問題です。名古屋生活クラブに出荷している農家の多くは少数の例外を除いて、肥料の出所がはっきりしています。今後は、この少数の農家のチェック、及び肥料の切り替えを進めて行きたいと考えています。

(2008/9/9 掲載)

ひじきの砒素について

名古屋生活クラブの考え

ひじきの砒素について


ひじきの砒素汚染の報道を受けて、少し調べてみました。

砒素は火山活動、鉱物採掘などにより,土壌、地下水が汚染されています。

汚染と書きましたが、砒素は地域的な高低はあるものの、どこにでもある元素で、火山活動、鉱物採掘などの盛んな地域で、とくに濃度が高く(100倍〜)(インド、中国、バングラデシュ、台湾など)健康被害が問題になっています。海の生き物に濃縮されている事が多く、その中でもひじきなどに顕著です。

それ以外の汚染源としては農薬として木材の防腐剤として大量に使われてきました。

みかんの酸味を減らす農薬として(今は失効)累積生産量3万2700トン、木材の防腐剤としても最近は使用量が減ってきていますが、アメリカ国内では80%もの材木が処理されており、日本でも過去の大量使用していた材木の焼却などで、環境に大量放出される心配があります。

ひ砒素の毒性としては発ガン性などがかなり疑われています。

(職業病としてのひ砒素の発ガン性ははっきりしています)

ひじきに関しては水戻しでかなりのひ砒素が水に溶け出しますので、よく水にさらし、食べ過ぎないよう注意しましょう。

 

参考(表 各種食品中の総ヒ素及び無機ヒ素含有量の例(抜粋))

食品 総ヒ素(μg/g) 無機ヒ素(μg/g)
穀類 米3) 0.01〜0.76 0.01〜0.51
とうもろこし <0.004 <0.003
小麦粉 0.04 0.01
肉類 牛肉 0.05 <0.003
鶏肉 0.09 <0.003
豚肉 0.01 <0.003
野菜 レタス <0.004 <0.003
たまねぎ 0.01 0.003
トマト 0.01 <0.003
にんじん 0.007 0.004
ジャガイモ <0.004 <0.003
果物 リンゴ 0.005 <0.003
バナナ <0.004 <0.003
オレンジジュース 0.005 <0.003
ぶどう 0.01 0.004
魚介類 ツナ缶 0.16〜0.77 <0.003
えび 0.47〜2.82 <0.003
海藻 こんぶ 19〜75 <0.3
のり 18〜32 <0.3
わかめ 29〜42 <0.3
ひじき 95〜134 72〜96
0.02 <0.003
その他 砂糖 0.01〜0.02 0.004
0.005 <0.003

注:海藻は、乾燥したもの
参考:Japan Food Research Laboratories Newa No.82 Dec. 2008

JECFAの無機ヒ素の暫定的耐容週間摂取量は、15μg/1kg(体重)/週。体重60kgの人なら、週に900μg(ひじきなら10g。ただし、水に戻す時に、かなり減る)。

発がん性のリスクは、もう少し低濃度でも有りそう。


ついでに森永ひ砒素ミルク事件について

粉ミルクを水に溶けやすくするため添加していた、リン酸ナトリウムに亜ヒ酸が大量に混入していた事件です。

このリン酸ナトリウムは、日本軽金属がボーキサイトからアルミニウムを取り出した後の産廃を脱色だけしか行わず、粉ミルクに使ったために亜ヒ酸が混入していたものです。

(伊澤)

(2012/07/19 掲載)

大気汚染による肺ガンのリスク

肺ガンについて
Carcinogenesis Advance Access


大気汚染が肺ガンの危険性を高めています。大気汚染が、遺伝子DNA付加物(化学物質がDNAに化合すること…突然変異の先駆け)を増やします。大気汚染物質が遺伝毒性を示すことは、はっきりしています。

肺ガンは、連続的な変化を起こして進行します。例えば、遺伝子の変異、遺伝子のプロモーター(スイッチ)の異常なメチル化(メチル化によって、スイッチが働かなくなる)などです。

大気汚染の指標、二酸化窒素の濃度が、1立方メーターあたり10μgの増加につき、肺ガンの危険性は、1.1倍増えます。

TP53(ガン抑制遺伝子)を調べてみると、タバコを吸う人は、吸わない人に比べ、より多く変異しており、1日に吸う本数に比例しています。そしてそれらの変異は、前ガン状態の部分にも、一見健全に見える部分にも、変異が見られます。

中国で、非喫煙者の肺ガン患者を調べたところ、TP53(ガン抑制遺伝子)が71%もの高率で突然変異を生じていました。これは、石炭の燃焼による汚染の結果と考えられています。(中国では、石炭を暖房に使っている。)

TP53とは異なる別の、ガン抑制遺伝子のプロモーター(スイッチ)の異常なメチル化も、肺ガン患者に高率(20〜100%)に見られます。その様な遺伝子として、P16という遺伝子があります。このP16遺伝子は、細胞周期(細胞分裂)を進むのを抑える遺伝子です。肺がんの患者ではこの遺伝子(P16)のプロモーター(スイッチ)がメチル化されて(遺伝子産物が作られない)おり、細胞分裂を止められなくなります。その変異が20〜65%もの高率で見られます。このP16遺伝子のメチル化は、喫煙とともに進みます。喫煙をやめたら減る、というものでもありません。

肺ガンが増えています。タバコの影響もありますが、大気汚染の影響はそれ以上です。それらは着実にDNAのいろいろな部分に変異をもたらし、多くの変異が蓄積していきます。それらの変異が、ガン抑制遺伝子など重要な遺伝子に起き、引き続いて別の重要な遺伝子にも変異が起きているという、変異の蓄積によって、肺ガンが起こることが、DNAを調べることで分かってきました。

大気汚染の防止、ディーゼル車の廃止などが求められています。
 

(2012/7/19 掲載)

水道水中のトリハロメタンが呼吸に及ぼす影響

論文で紹介します

Changes in breath trihalomethane levels resulting from household water-use activities.
水道水を使う家の中の活動が呼吸中のトリハロメタンに及ぼす影響
Syolney M Gordon Battelle Memorial 研究所 アメリカ
Environmental Health Perspectives 114 4 2006


水道水の塩素処理により、クロロホルムなどのトリハロメタン類が生成する数多くの研究が飲み水のトリハロメタン量と、膀胱ガン、直腸ガン、奇形などとの関連を見つけています。

同様に、シャワー、お風呂、洗濯、皿洗いなども、トリハロメタン曝露に関係しています。バッカーらは、飲み水、シャワー、お風呂の活動の前後で血中のトリハロメタン濃度が上昇しましたが、1Lの飲み水では、わずかな上昇にとどまりました。


結果

シャワー(10分)、お風呂(14分)、洗濯、食器洗いの使用が室内のクロロホルムの空気中濃度を上昇させたが、その中でシャワーとお風呂のみが呼気中の濃度を上昇させた。

呼気中のクロロホルム濃度 室内のクロロホルム濃度
最初 0.04 ほとんど0
10分シャワー後 0.19 2.28
14分お風呂後 0.68 0.25


解説

水道水の塩素消毒によって生じるトリハロメタン類(クロロホルムなど)が発ガン性を持っているため、各家庭でも浄水器などを使う場合が増えています。今回の論文では、飲み水よりもお風呂、シャワーなどで体内に入るトリハロメタンの方が多い可能性が示唆されました。シャワーに浄水器をつけるか、換気を充分に行う必要を感じさせます。

(伊澤)

(2012/07/19 掲載)

内分泌かく乱物質の後天的な、世代を越える作用

論文で紹介します

Seminiferous cord formation and germ-cell programming Epigenetic transgenerational actions of endocrine disruptors
輸精索の形成と、配偶子細胞のプログラミング 内分泌かく乱物質のエピジェネティック(後天的)な、世代を越える作用
Matthew D. Anway ワシントン州立大学 アメリカ
Ann N.Y. Acad. Sci. 1061.18-32 (2005)


ここ10年で、放射線、化学物質、内分泌かく乱物質のような環境毒物による、世代を越えて(trangenerational)の影響が報告されている。

放射線による、世代を越える影響は、最初に認められ、その中のいくつかは生殖系列を通して何代にも伝わっていったことが示された。これらは、次の世代での突然変異と、ガンの形成にも、しばしばつながった。

内分泌かく乱物質のような、環境毒物も、親の世代での曝露につづき、子供(F1)に影響することが示されてきた。

始源生殖細胞(PGCs)のDNAのメチル化状態の最近の研究では、PGCsが生殖堤に下降するにつれ、脱メチル化が始まる。

生殖腺で性の決定期の間に、生殖細胞は、生殖細胞の性の決定に関わる再メチル化を行う。

内分泌かく乱物質、ビンクロゾリン(ワイン栽培に使われる殺菌剤)、メトキシクロル(農薬)は、精巣の形態形成を、生殖細胞が再メチル化を行う時と同時に変える。

生殖腺の性決定時の内分泌かく乱物質の一時的な曝露は、大人の精巣での、精子形成細胞のアポトーシス(死)の上昇と、精子濃度の減少につながる。そして、その影響が4世代先まで続いていく。この、世代を越えての影響は、DNAのメチル化の変化によっている。

F2世代の内分泌かく乱処理の子孫のオスと未処理のメスとの戻し交配での、子供(F3)では、精子の運動性の低下、精子形成細胞のアポトーシス(死)の増加、が同様に起きたが、逆の交配(処理のメス×未処理のオス)では、起きなかった。
 

(2012/07/20 掲載)

硝酸とアミン類の食事の組み合わせによるニトロソアミンの生成

論文で紹介します

Volatile N-nitrosamine formation after intake of nitrate at the ADI level in combination with an amine-rich diet
ADI(1日摂取許容量)くらいの硝酸の摂取と、アミン類に富んだ食事(魚など)の組み合わせによる、ニトロソアミンの生成
Ingrid T.M.Vermeer 健康リスク分析と毒物学部 マーストリヒト大学 オランダ
Environmental Health Perspectives 106.8.August 1998


最初に

ヒトは、硝酸を主に食物から、そして、少ない割合で、飲み水から摂取している。野菜類が少なくとも85%の摂取源になっている。

飲み水の場合、WHO(世界保健機構)の最大許容量は、44.3mg/lである。ヨーロッパの公共水道では、45mg/lを越すことはめったにない。

個人所有の井戸水では、300mg/l以上の場合もある。

WHOは、地表水と地下水の硝酸濃度がここ10年で、めだって増加しており、その原因は、肥料使用の増大、集約畜産からの廃棄などであり、人類に対して、リスクが増加していると述べています。硝酸の約5%は、体内で、より毒性の高い亜硝酸に変わる。

亜硝酸は、ヘモグロビンと反応して、メトヘモグロビンを作るが、メトヘモグロビンは、酸素を運ぶことができない。

このメトヘモグロビン血症は、乳幼児がとくに危険である。

動物実験での無毒性量に基づいて、WHOは、硝酸イオンのADI(1日摂取許容量)を、3.67mg/kgに投与した。(1974年)

硝酸の他の毒性として、体内での発ガン性のあるN-ニトロソ化合物の生成による遺伝毒性のリスクがある。

硝酸から変換した亜硝酸が、体内でアミン類やアミド類と反応しN-ニトロソ化合物を生成する。およそ300種類の、N-ニトロソ化合物が発ガン性を調べられ、209種類のニトロソアミン類の85%、86種類のニトロソアミド類の92%がいろいろな動物種に発ガン性を持っていた。

ヒトの場合、体内で生成されるN-ニトロソ化合物は、胃ガン、食道ガン、膀胱ガンの危険性につながっている。ヒトに対する発ガンの確定的な証拠はまだないが、Wardは、飲み水の硝酸汚染が非ホジキン性リンパ腫の発生との関連を見ている。LinとHoは、亜硝酸とアミン類の同時摂取で体内で生成されたニトロソ化合物による、ラットの肝臓ガンの発生を報告している。最近の研究では、高いレベルの硝酸を含む井戸水の使用者に、突然変異の増加と、それらの尿中に発ガン性のニトロソ化合物、N-ニトロソジメチルアミン、N-ニトロソジエチルアミン、などが高い濃度で検出された。

この研究の目的は、1日摂取許容量(ADI)レベルの硝酸の摂取による、ニトロソアミニトロソアミンの生成を、調査することです。

アミン類として、フィッシュミール、ADIレベルの硝酸を同時にボランティアに摂取してもらい、尿中のニトロソアミン量を検出することです。


結果

24人のボランティアに対して、実験は3段階で行われた。

尿中硝酸量
(24時間総量)
尿中ジメチルニトロソアミン量
(24時間総量)
1週間(実験前の1週間)
低硝酸の食事、水
76mg 287ng
1週間(実験中の1週間)
ADIレベルの硝酸
+フィッシュミール
194mg〜165mg 871ng〜640ng
1週間(実験後の1週間)
低硝酸の食事、水
77mg 383ng

ADI(1日摂取許容量)レベルの硝酸とフィッシュミールの同時摂取で発ガン性のある、ジメチルニトロソアミンが実験前の約3倍に増加した。


解説

硝酸(NO3)は、野菜に多く含まれています。肥料(化学肥料、有機肥料)を多く施して収穫量を上げる傾向がどんどん強まった結果、各国とも野菜に含まれる硝酸が増加しています。Euは規制があり、低減化の努力をしています。日本には規制がなく、世界的に見ても野菜の硝酸含有量はトップクラスです。

この硝酸、体内で発ガン性のあるN-ニトロソ化合物に変わる事が知られています。が、発ガン性が確定しているわけではないので、Eu以外の国は規制をかけていません。

硝酸のADI(1日摂取許容量)は、発ガン性以外の毒性を基にして、作られています。日本人の硝酸摂取量はADIと、ほぼ同じ位だとか、越えているとか、といったレベルですので、この実験の硝酸量と実は、ほぼ同じなのです。

日本人が食べる野菜の硝酸量はADIと同じくらい、なおかつ、日本人は魚をよく食べる。

このことは、この実験と日本人の食生活が同じということを意味しています。

ということは、こんなに体内で発ガン性物質ができている? という疑いが、濃いのです。

でも、安心なことも少なからずあります。

野菜に含まれる硝酸の量は、作物の種類でも大きく変わりますし、栽培法(水耕>ハウス>露地)でも大きく変わりますし、肥料の量でも大きく変わります。

実際に測った例もあります。

みんなの未来(野菜セット)のグループの根岸さんの野菜を測定した事があるそうです。普通栽培の100分の1くらいでした。これなら安全です。

見た目を重視すると、水耕>ハウス>露地、で、実際にどんどん水耕、ハウスが増えています。

でも、硝酸で安全性を考えると、全く逆です。

大きくて、見た目がきれいな野菜がいちばん硝酸が高いはずです。

野菜ジュースなども、1本飲むだけでADI(1日摂取許容量)を越えてしまう場合もあるそうです。お気をつけ下さい。

(伊澤)

(2012/07/20 掲載)



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