トランス脂肪酸について知ろう

フレッド・クメローほどFDA人工トランス脂肪酸廃止の決定に喜ぶ者はいないだろう

ワシントンポストにトランス脂肪酸の研究をしている科学者(フレッド・クメロー)の記事が載っていました。クメローさんの研究を年ごとにまとめてみました。
 
http://www.washingtonpost.com/news/to-your-health/wp/2015/06/16/the-100-year-old-scientist-who-pushed-the-fda-to-ban-artificial-trans-fat/
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1950年にクメローが、大学で心臓病で死んだ人間の動脈からトランス脂肪酸を沢山見つける
    ↓1957年にクメローが、動脈を詰まらせるトランス脂肪の危険性を警告する研究を出版
    ↓
この10年以上後、クメローが、ショートニング、マーガリン中のトランス脂肪量を詳細に発表
    ↓
(この頃の状況)
1980年代でも、多くの科学者、関係者は、部分水素添加油【トランス脂肪酸の原因?】は飽和脂肪【動物性油】より良いと信じていた
1990年代にトランス脂肪が増加している心臓病の主犯だという研究が増える
    ↓
1994年に公衆のための科学センターが、FDA【アメリカ食品医薬品局】に表示主張
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2002年にアメリカ医学研究所が「トランス脂肪酸には安全なレベルがなく、可能な限り少なくすべき」、と主張
    ↓
2006年に表示義務化    ↓
2009年にクメローがFDAに請願提出【トランス脂肪の悪い証拠が増えている、アメリカ人の食事から部分水素添加油を禁止するように提案】
    ↓
2013年にクメローは4年経ったがヒアリングがないので、FDA、保健福祉省を訴える
    ↓
3ヵ月後にFDAはトランス脂肪は安全とは見なされず、効果的になくしていく計画を公表
    ↓2015年6月16日に、製造業者は「(部分水素添加した油を使用した製品を)3年以内に作りかえるか、例外として認めるよう申請する事」と決定。

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部分水素添加油にする理由は商品の価格を安くし、賞味期限を延ばし、美味しく感じさせる為、だそうです。実際この3つはとても魅力的です。
でもクメローさんは60年以上、トランス脂肪酸廃止のために研究を続けてくれました。彼が100歳を過ぎた今、アメリカからトランス脂肪酸がなくなろうとしています。
安全かわかっていないものに基準が設定される日本でも、このように何かが良い方向に進むといいと思います。商品が安いのにも高いのにも理由がある。賞味期限が短いのも長いのにも理由がある。美味しく感じるのにも理由がある。食品を選ぶ際、それを保存させたい時、私は消費者として何に疑問を持って、何を選ぶのか、自分の子供に何を伝えていくべきかをよく悩み疲れてしまいますが、クメローさんの記事を読むことができて元気が出ました。(菅原)
 
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登場する機関
FDA:アメリカ合衆国の政府機関。食品や医薬品等の許可や違反品の取締りなどの行政を専門的に行う。

アメリカ心臓協会:アメリカの患者支援団体。心血管障害、脳卒中の研究および、心肺蘇生教育に関する世界的情報発信団体であり、世界的権威でもある。英文の頭文字を取りAHAと呼ばれることもある。

CSPI(公衆のための科学センター):食品安全、健康に関する情報を発信している団体

米国医学研究所: 1970年に設立された独立非営利の学術機関。研究会開催や報告書発行によって、健康や医療に関する議会や政府への助言を、政府から独立して行っている。

アメリカ合衆国保健福祉省:アメリカ合衆国の政府機関。全てのアメリカ人の健康を保護して、重要な社会事業を提供することを目的とした機関。FDAは、この中の部局の1つ。

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補足 
2015/6/23の朝日新聞に、アメリカでトランス脂肪酸が禁止になる事に対する質問への回答が載っていました。そこには、
--------以下、抜粋
日本では食品安全委員会が2012年に「日本人の通常の食生活では健康への影響は小さい」とする評価書をまとめました。厚生労働省は「規制は考えていない」と説明しています。今年4月施行の食品表示法では、含有量の表示は任意表示にとどめられました。食品業界は自主的に低減の取り組みを進めています。
食品安全委の計算では、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は1日あたり0・67グラムで、摂取エネルギーの0・3%でした。摂取量の多い方から5%の位置にある人でも0・7%で、WHOの基準を下回っています。
これに対し、米国の20〜59歳の平均摂取量は1日5・6グラムで、総エネルギーの2・2%というデータもあります。食生活が違うためで、クッキーやパンなどからの摂取が多いそうです。食品安全委によると、平均的な日本人の摂取量では、疾患リスクとの関連は明らかではないそうです。
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と書かれています。
数値としては、日本の数値は食品安全委員会の最新の数値ですが、その他の研究結果として併記されているより高い数値には、触れていません。また、アメリカの数値は、トランス脂肪酸の表示義務ができる前のものです。2013年
のFDAの公表では、2.5グラムです。更に、WHOの基準は、努力目標であり、2002年のアメリカ医学研究所の主張のように、これ以下であれば安全というものではありません。
非常に時間がかかっても、少しずつ変化しているアメリカと、何もしない日本。そして、そこに疑いも持たない日本のマスコミが、良く現れています。(外山)


以下、全訳記事の全訳です。

ワシントンポスト 2015年 616
 
フレッド・クメローは100歳のイリノイ大学教授で、動脈を詰まらせる物質の危険性について60年以上にもわたって警告を発してきた人物ですが、FDA(アメリカ食品医薬品局)の人工トランス脂肪酸廃止の決定を、彼ほど喜んでいる人はいないでしょう。
 

クメローは2013年にFDAを訴えた。イリノイの自宅でインタビューに答えた。「科学は勝った」、「私たちの食事にトランス脂肪酸が含まれないことはとても重要だ」
1950年代、若かった大学の研究者クメローは、心臓病で死んだ人間の動脈を調べて確信した。動脈には人工トランス脂肪が多く含まれていた(それ以前に発見されており国中の加工食品に含まれていた)。
のちに、彼は人工トランス脂肪酸を与えたラットが動脈硬化を起こす研究を行った。エサからトランス脂肪を抜くと、動脈硬化が無くなった。クメローは動脈を詰まらせるトランス脂肪の危険性を警告する研究を1957年に出版した。
10年以上後に、アメリカ心臓協会の分科会で、ショートニング、マーガリン中のトランス脂肪量を詳細にした。そして、食品業界がトランス脂肪量を減らしてくれるだろうと確認した。
 
クメローの研究と警告にもかかわらず、人工トランス脂肪はそのままだった。
1980年代さえ、多くの科学者と関係者は、部分水素添加油が飽和脂肪より、良いと信じていた。
そして、食品業界は人工トランス脂肪を減らしたがらなかった。それは「安い」、「賞味期限を伸ばすことができる」、「望みの味と歯ごたえを食品にもたらす」という理由からだった。 
「何年もかけて、グループを作って研究をしても、いつも同じような結果になる様でした。」
「結論を出すには、更なる研究が必要だ、ということでいつも終わりました。」
 
行動の無さにいらついて、クメローは2009年にFDAに請願を提出した。それには、トランス脂肪の悪い証拠が増えていること、そして、アメリカ人の食事から部分水素添加油を禁止することが提案されていた。
 
その頃は、彼は、ひとりで戦っているわけではなかった。
 
1990年代には、トランス脂肪が、増加している心臓病の主犯だという研究がどんどん多くなっていた。公衆のための科学センターは、1994年にFDAに表示を主張し、2006年には表示が義務化された。2002年、アメリカ医学研究所は「トランス脂肪酸には安全なレベルがなく、可能な限り少なくするべきだ」と主張した。
 
クメローがFDAに請願を提出して4年経っても、ヒアリングは無かった。クメローは、FDAと保健福祉省を2013年に訴えた。

 
3ヶ月後に、FDAは、トランス脂肪は安全とは見なされず、効果的に無くしていくという計画を公表しました。
火曜日(2015年6月16日)の決定は、製造業者が3年以内に作りかえるか、例外として認めるよう申請するかの最終の決定です。
政府がほとんどのトランス脂肪を無くすことで、何千人もの命(訳注.1年で)救うことができる。クメローの次の仕事は、揚げた脂肪が代謝に与える研究を推し進めることです。
彼自身の食事では、コレステロールはそんなに気にしていない、というのも、コレステロールが心臓病の主犯ではないと思っているからです。

牛乳も飲み、卵も食べる。しかし、彼は、フライ物、マーガリンなど部分水素添加油が含まれる全てのものを食べないようにしている。
 
クメローは、彼の100歳の誕生日に誰かが持ってきたケーキの表示を見て、すばやく、トランス脂肪を含んでいることに気がついた。
 
「外に投げ捨てたよ」と冗談を言った。
 
「他にも食べるべきものはいっぱいある」
 
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トランス脂肪酸の摂取は、安全とは言えない

2013年11月7日に、アメリカのFDA(食品医薬品局)が、食品に含まれるトランス脂肪酸は、安全とはみなせなくなったという見解を発表いたしました。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の試算によると、食品からのトランス脂肪酸の摂取を減少させる事によって、心疾患による死者が年間7,000人、2万人以上の心臓発作を減らす事ができるとの事です。
この後、パブリックコメントを受け付けた後、最終結論を出す事になります。
http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm372915.htm
 
CNNの報道によると、FDAのハンバーグ局長は今回の措置について、「トランス脂肪酸の潜在的危険からより多くの米国人を守るための重要な1歩」と位置付ける。FDA当局者も「健康への影響を考えると、できるだけ迅速に対応したい」と表明している事から、トランス脂肪酸を含む食品の大部分が禁止される可能性が高いと思われます。
 
トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニング、チョコレート、揚げ物用の油などに多く含まれています。多くの植物性油脂は、不飽和脂肪酸の割合が多く、常温では液体ですが、動物性油脂は、飽和脂肪酸の割合が多く、常温で固まります(だから、バターは硬い)。そこで、紅花油、コーン油などの植物性油脂に、水素を反応させて(理科の教科書的には、2重結合の部分に水素が結合し、単結合になる)飽和脂肪酸の割合を高める事によって、バターのような状態にします。マーガリンは、この様にして作ります。



 2006年に発表された論文では、アメリカで年間120万人が心筋梗塞で死亡しており、トランス脂肪酸を他のものに切り替える事によって、72,000〜264,000人の命が救われると試算されています。アメリカでは、2006年からトランス脂肪酸の表示義務ができたので、現在は2005年と比較して、73%以上摂取量が減っているようです(CNNの記事より)。現在の摂取量でも、不安が残るという事で、今回の発表となりました。アメリカでは、摂取量が減ったから、禁止しても業界から反発を受けにくくなったのかもしれませんが、以前からリスクがあると言われてきたものであり、できる限り減らすべきものです。
一方、日本では、2012年の食品表示一元化の検討委員会でも議論されるなど、以前から検討はされているのですが、未だに表示義務さえありません。
 
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