ウイルスについて知ろう

体を守る免疫系の暴走

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化の一つの原因として、免疫系の暴走が深くかかわっていると言われています。これは、新型コロナウイルスに限らず、病原性の高いインフルエンザなど様々なウイルスでみられる現象です。

 

東京大学医学研究科の河岡教授らのグループは、1918年に世界的に大流行し、2000万人以上の死者を出したスペイン風邪のウイルスが、免疫系にどのような異常を起こすのか調べました。スペイン風邪のウイルスは、既に存在しないので、この実験ではスペイン風邪のウイルスを人工的に作って、普通のインフルエンザ(2002年に患者から分離したもの)と比較しました。

 

論文1 普通のインフルエンザウイルスの表面のたんぱく質(HA)を、スペイン風邪ウイルスのものと入れ替えてマウスに感染させた実験

Nature. 2004 Oct 7;431(7009):703-7.

 

論文2 スペイン風邪のウイルス全体を作り、サルに感染させた実験

Nature. 2007 Jan 18;445(7125):319-23.

 

(結果)

ウイルス表面の一部だけを変えた論文1の実験も、全体をスペイン風邪にして詳細に調べた論文2でも、似たような傾向がみられています。

 

スペイン風邪のウイルスと普通のインフルエンザを比較すると

1. ウイルスの増殖を抑制する物質、ウイルスを攻撃する免疫細胞を活性化させる物質

  

 出てこない 又は 遅い (図の上の方)

 

 

2. 好中球(白血球の一種)の活性化や浸潤(白血球は、血管を流れるだけでなく、遊走と言って細胞の間を通って移動する事ができる)に関係する物質

  

 大量に、長期間出続ける (図の中段の一つと下の方)

 

 

それぞれ、免疫にかかわる物質(サイトカイン)の量を示している。 赤:増えた 緑:減った

 

 

(解説)

普通のインフルエンザの場合、感染初期にウイルスの増殖を抑えたり、免疫系を活性化する物質が出てきた後、短期間の間に通常の状態に戻ります。しかし、スペイン風邪ではウイルスを排除する物質が出てこない、遅い。逆に、過剰に出てきたり、いつまでも出続けるというように、バランスが崩れてしまっています。過剰に長期間活性化された免疫系は、感染した細胞だけでなく必要以上に人の細胞を破壊し、体を蝕んでいき、死に至らせます。スペイン風邪では、こんなことが起きていました。

新型コロナウイルスでも、似たようなデータが出てきています。論文1で、インフルエンザウイルスの一部を入れ替えただけでも免疫系に大きな影響が出るように、全体的には似ていても、病気の重さが大きく変わるという事があります。

 

 

(おまけ 生物の人工合成)

さらっと、人工的に作ったと書きましたが、多くの人には衝撃的なことではないでしょうか?インフルエンザの場合、一つのウイルスの中に遺伝子として8本のRNAが入っています。RNAは、生物の中でDNAをコピーして作る事ができるので、この8本の遺伝子と、ウイルスを作るのに必要な酵素の遺伝子をベクター(遺伝子の運び屋)とつないで細胞に入れてやると、インフルエンザウイルスができます。簡単に言ってしまうと、ウイルスが感染しなくても、ウイルスの遺伝子と必要な酵素を直接入れてやると、インフルエンザウイルスが増殖してきます。

今回紹介したグループが、インフルエンザウイルスを人工的に作る技術を確立したのは、20年以上前(自分が大学院生だったころ)でした。インフルエンザを人工的に作ることができるようになったので、既に消えてしまった過去のインフルエンザを蘇らせて、なぜこんなに人が死んだのか調べることができるようになりました。簡単とは言いませんが、ウイルスや小さな細菌なら、技術的には人工的に作る事ができるようになってきた時代で、遺伝子の一部を入れ替えて、機能を調べるなんてことは、当たり前の技術になっていた時代です。

 

そんなに前から、インフルエンザウイルスを人工的に作っていたのであれば、新型コロナウイルス(COVID-19)も同様の方法で人工的に作ったんじゃないの?って言われそうですね。遺伝子の配列がわかっていれば、その通りに作ることはおそらく可能です。しかし、実際の遺伝子配列を見る限り、人工的に作ったものではなさそうです。人間が設計したと考えるには、あまりにも突拍子もない発想で、根拠のない様々な改変が重なっています(http://1.nagoyaseikatsuclub.com/?eid=299)。

この研究のように、「過去に存在していたウイルスの性質を調べる」「一部分を入れ替える」という事はしますが、全く新しいものを設計するのは非常に困難で、そんな面倒で成功する確率の低いことは普通はしません。この頃よりはるかに技術の進歩した現在でも、一部分を入れ替えただけでも、思わぬ事が起こってしまうのが現実です。

 

2020/05/29 外山

新型コロナウイルスの広がり(アイスランド)

アイスランドで、新型コロナウイルスがどのように広がっていったのか調べた論文です。感染リスクの高いところに行った人や、感染者と接触した人に急速に広がっていきましたが、その他の人への広がりは抑えられていました。

 

Spread of SARS-CoV-2 in the Icelandic Population

2020/4/19 The New england Jornal of Medicene(電子版)

アイスランド大学

 

調査の方法

  1. 最近、感染の広がっている国に行った人を、高リスク者として新型コロナウイルスの検査をした
  2. 一般の人に協力してもらい、新型コロナウイルスの検査をした
  3. 陽性が判明したら、感染者と接触した人を、高リスク者に追加して新型コロナウイルスの検査をした

このように、高リスク者と一般の人に分けて、新型コロナウイルスがどれくらい広がっているか調べました。

 

ターゲット

高リスク者 (2020/1/31〜3/31まで調査)

・最近、感染の広がっている国に行った人と、感染者と接触のあった人 9199人

 

一般の人 

・自由参加 10797人 (2020/3/13〜4/1に調査)

・ランダムに招待 2283人 (2020/4/1〜4/4に調査)

合計すると、人口の6%に相当する人数になる

 

結果

4/4現在

高リスク者:       9199人中1221人が感染していた 13.3%

一般の人:          10797人中87人が感染していた    0.8%

                            2283人中13人が感染していた  0.6%

 

10歳未満の子供は、10歳以上の人よりも陽性率が低かった 

高リスク者:       6.7%:13.7%

一般         :       10歳未満に陽性無し

 

女性より男性の方が感染者の割合が高い

高リスク者:       女性 11.0%:男性 16.7%

一般         :       女性  0.6%:男性   0.9%

 

初めのうちは、海外での感染が多かったが、後半は家族間、感染経路不明が増えてきた。

 

(解説)

高リスク者に、多くの感染者が出ましたが、一般の人への感染は、低く抑えられていて、この調査をした期間を通して増える事は有りませんでした。人口20万人程度のアイスランドで、1300人以上の感染者がいますが、リスクの高い人への感染は、爆発的には増えていませんでした。一般の人の中にも0.8%程度の感染者がいるので、少ないとは言えませんが、感染者との接触を避ける事が大切だという事を示しています。10歳未満の子供や、女性の方が感染者が少ない傾向はみられますが、安心できるような差ではありません。

リスクの高いところには行かないという基本を、改めて示した論文です。

2020/4/24 外山

 

新型コロナの検査をして陽性だった人の約88%が、検査当時に無症状だった

驚きました。新型コロナの検査をして陽性だった人の約88%が、検査当時に無症状でした。

以下、論文の解説です。

 

Universal screening for SARS-Cov-2 in woman admitted for delivery

出産予定の女性を全員、新型コロナの検査をした。

 

April 13 2020.  The new England journal of medicine  コロンビア大学 アメリカ

 

2020年の3/22から4/4までに、215人の妊婦を全員検査した。そのうち4人(全体の1.9%)の妊婦は熱などの症状があり、検査結果も陽性だった。

残りの211人は熱などの症状は無かったが、その211人のうち210人を検査した。(1人は検査無し)

 

無症状だった210 ⇒ 29 陽性13.7%

            181 陰性 → 1人が3日後、陽性に(症状あり)

 

【結果】

検査で陽性だった33人の内、症状があった人は4人(12.1%)、症状が無い人は29人(87.9%)だった。

⇒  87.9%の人は症状が無かった  ⇒ このうち、3人(10%)がその後発熱した。

1918年のインフルエンザ大流行時の流行防止介入と効果

この先に例え一時的にコロナが収束したかのような時期が来たとしても、安易に油断はできません。
以下の論文は、1918年にインフルエンザが世界的な大流行をおこした際の、各都市の対応とその効果について検証しています。

 

 

Public health interventions and epidemic intensity during the 1918 influenza pandemic
1918年のインフルエンザ大流行時の流行防止介入と効果
国立アレルギー感染症研究所 アメリカ 7582-7587 PNAS May1.2007  vol.104

1918年のインフルエンザの大流行は、アメリカ国内での死者は50万〜67.5万人、世界中では5000万人から1億人の死者が出ていたと推定されている。アメリカ国内の17都市の19種の流行防止介入のタイミングとその種類(学校閉鎖、劇場閉鎖、集会の禁止など)が多く、早く実行したほど感染が減少したかどうかを検証した。

 

【結果】
多くの介入をより早く実行した都市ほど、介入しなかった都市に比べてピークの時の死亡率が50%低かった。さらに、多くの介入をより早く実行した都市は総死亡数も下げたが、介入しなかった都市に比べて違いは20%以下と小さかった。これは1918年の介入で、6週間以上続けた都市がほとんど無かったからである(訳者注:第2波が再発した。第1波で死者が少なかった都市ほど、第2波の死者が多かった事による)

 

【結論】
より早く、多くの介入(学校閉鎖、劇場閉鎖、集会の禁止など)をすると感染が減少するが、介入をゆるめるとウィルスは再発する。(伊澤)

コロナウィルスの今後を予測する

ハーバード大学が、新型コロナウィルスの今後を予測しています。

 

Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period.

大流行後のSARS-CoV-2の流行を予測する  ハーバード大学 14 April 2020 Science

 

SARS-CoV-2の今後を予測することが緊急です。SARS-CoV-2の近縁ウィルス(ベータ―コロナウィルス類)OC43とHKU1に関する、季節性、免疫性(免疫がどれぐらいの期間有効か?この近縁のウィルスOC43とHKU1の場合、感染して免疫が出来ても1年しか有効ではない)、交差免疫性(OC43とHKU1に対して免疫がある人がSARS-CoV-2に対して、どの程度免疫が有効か?)などのアメリカ国内のデータを当てはめてSARS-CoV-2の今後を予測した。

 

初期の大流行後に冬に再度、流行が起こることを予測した。今のところ他に有効な防ぐ手段(薬、ワクチンなど)が無いので、ソーシャルディスタンシング(隔離)の成功のみが、医療能力を越してしまうかどうかにかかっている。医療能力の充実と効果的な治療法は、(いったん流行が収束しても再発しそうな時に行う)ソーシャルディスタンシングを成功させ、集団免疫を獲得させる。
SARS-CoV-2に対する免疫の程度と期間を知るための、長期の抗体検査が必要です。一見終わったかのように見えても、2024年末までは伝染の再発がありうるので、SARS-CoV-2への監視を続けなければならない。

 

 

以下【解説】

 

SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)が今後どうなっていくのか、予測する上で重要な点は次の4点です。

 

感染に季節性があるのか
免疫が有効な期間 (一度感染した後で、どの位の期間免疫が続くのか?)
交差免疫 (新型コロナ以外のコロナウィルスに対しての免疫が、新型コロナにどの位有効か?)
感染を抑え込む力の強度と期間(時期)

 

新型コロナ以外のコロナウィルスとして、ヒトに感染するコロナウィルスOC43とHKU1が知られています。どちらも風邪の症状を起こしますが、新型コロナ同様に症状が出なかったり、症状が軽いという特徴があります。それ以外に

 

季節性がある(冬が感染のピーク)
交差免疫がある(OC43への抗体は、SARS-CoV-1にも作用し、その逆も当てはまる)

という特徴があります。


これらの特徴から、新型コロナの今後を予測すると

 

免疫が長期間持続すれば → 新型コロナは無くなっていく

 

免疫が他のコロナウィルス同様、1年限りだとすると → インフルエンザの様に社会に定着し、秋から冬に流行が始まり感染が広がっていく
→ とすると、ソーシャルディスタンシング(隔離)を患者の推移を見ながら、何度も繰り返していく必要がある。薬、ワクチンなど有効な他の手段が導入されるまでは、医療崩壊を避けるために、随時ソーシャルディスタンシングを実行する必要があり、2022年まで、もしくは2024年末までソーシャルディスタンシング必要。

 

 2020年の冬、春の感染が低いレベルで終息してソーシャルディスタンシングを軽視すると、2020年秋に大流行する可能性がある。1918年のインフルエンザの大流行の時にも、アメリカで同じようなことが起きた(PNAS.May1.2007 国立アレルギー感染病研究所 アメリカ)



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